ベイトキャスティングリールのスプール径について

Lwing

2015年05月27日 12:38

このブログを始めたころに購入した10スコーピオンXT1001は、スプール径とブレーキのバランスが悪く軽量ルアーが投げられる割に飛距離が伸びずに色々と試してきました。→ベイトタックルについて思う事

私の使い方とメーカーのコンセプトが違うとは思いますが、従来よりスプール径を小さくしたにもかかわらず使っているブレーキブロックは他のシリーズと共用ですので、バランスが悪いのは明らかです。


アフターパーツのAvail マイクロキャストスプールに変更しても遠心ブレーキとの相性が悪く、結局は遠心ブレーキからAvailのマイクロキャストブレーキ(マグネット)に変更して、やっと快適に使えるリールになりました。



そこで、今回はベイトキャスティングリールのスプール径だけに絞ってその特性を検証してみたいと思います。


前回に引き続き、例によってここから先はジジイの妄想ですよ~(笑)
しかも、内容はベイトキャスティングリール偏向www





さて、ベイトキャスティングリールを選ぶとき「軽量ルアーには小径のスプールがよい」という記事をよく見かけますが、これは正しくもあり間違いでもあります(もちろん私的に)。

小径スプールのメリットはスプール全体の重量も軽いので軽量ルアーを使ったときにスプールの立ち上がりレスポンスが良くなりますので、正しい選択といえます。

これは、小径化と軽量化により慣性モーメントを小さくできるからです。


一方で、スプールの外周が小さくなりますので1回転当たりの糸の放出量は大径スプールに比べ短くなります。

これがラインの放出抵抗につながる可能性があります。


ベイトキャスティングリールをお使いの方は経験的に糸巻き量を少なくするとバックラッシュしにくいことはご存知かと思いますが、これは二重滑車の原理で説明できます。




このスプール径と重量、糸の放出量と回転抵抗を比較しながら冒頭に書いたスコーピオンの小径スプールとブレーキユニットのバランスについて考えてみたいと思います。





最初に、スプール重量について見てみると、これは単純に小さくすれば軽くなることは感覚的にもわかりやすいと思います。
躯体を小さくすることで強度を保ちながらさらに薄く軽くできますから一見するとスプールは小さい方が良いように思えます。


ところが、小径のスプールは円周も小さくなりますから、スプール一回転で放出されるラインの長さは直径に比例して短くなりますし、ルアーの初速が一緒であれば小径スプールの方がスプールの初速も上がることになります。

同様に、同じ飛距離を出すのであれば小径スプールは大径スプールに比べて多く回転しなければならないことになります。

さらに、放出されたラインによる外周の減少も小径スプールの方が大きくなりますので最終的にさらに多く回転しなければいけないことになります。




こうして、スプールの直径を基準に考えた場合、小径になるほどより多くの回転スピードと最終的な回転数が必要になるわけです。






次に、スプールの直径と糸の放出抵抗を見てみると、スプール重量が一緒であれば径が大きいほうがラインの放出がスムーズになります。

これは、先ほどの「スプール一回転のライン放出量」に関係してきます。


スプール径が大きければ当然外周が大きくなりますのでルアーの初速が一緒ならスプールの回転速度が小さくなります。



ここで思い出していただきたいのは、ベイトキャスティングリールのブレーキは遠心にせよマグフォースにせよ回転速度と比例関係にあることです。

つまり、大径に比べ小径のスプールの方が初速で一気にブレーキがかかるという訳です。



では、ノーブレーキのときは?





この場合は、二重滑車の概念で考えてみます。



スプール軸は点で支えられているわけではなく、軸の周りをベアリングで支持していますので、糸が巻かれているスプール面とスプールを支持する軸の二重滑車と考えることができます。


滑車を回す力は回転中心からの距離に反比例します。


仮に軸の太さを3mmでスプール径が30mmと45mmのものを比較した場合、Φ45mmスプールはΦ30mmスプールに比べ2/3の力でスプール回すことができます。

ということは、Φ30mmスプールはΦ45mmスプールに比べルアーを放出するスプールの回り出しで約1.5倍の力が必要になります。



一方、スプールの回転に与えられるエネルギーはルアーが糸を引っ張る力です。スプール側から見た場合、時間当たりの糸の放出量はスプールの回転速度と言い換えることができますので、Φ30mmの方はΦ45mmに比べて1.5倍多く回らなければ同じ長さの糸を出せないことになります。

先ほどの回り出しの力の差と合わせると約2倍以上になります。



そして、スプールにはブレーキがなくてもベアリングの回転抵抗や、空気抵抗があります。

抵抗とは摩擦力と言い換えることができます。つまり、運動エネルギーのロス。
この摩擦力は速度に比例するので、糸の放出抵抗も1.5倍。






以上のことから小径スプールは大径スプールに比べブレーキも強く掛かり、回転抵抗も大きいことがわかります。
さらに、小径は糸癖が強いため、ナイロンやフロロを使った場合これも抵抗になります。

結果、飛距離にも影響が出てくるわけです。





ここで、2010年時点のシマノの代表的なリールのスプール径を比較してみますと、アンタレスがΦ37mm、その他がおおむねΦ35~34mm、10スコがΦ32mm、カルカッタ50がΦ30mmとなります。


この中で、専用ブレーキブロックを持っているのはカルカッタ50だけです。

というわけで、アンタレスやメタニウムなどスコーピオンに比べれば大きなスプールを持つリールと小径のスコーピオンがそのまま同じブレーキブロックを使えば当然オーバーブレーキになります。

さらに、遠心ブレーキはスプール速度の2乗に比例して強く効きますので、小径スプールではマグフォースに比べてさらに影響が出やすくなるのはお分かりいただけましたでしょうか?


ちなみに、アンタレスが良く飛ぶと言われている理由はこのスプールの大径化に加えスプールの素材やベアリングもほかのリールより上等素材を使っているからで、決して遠心だから飛ぶわけではありません(大人の事情ww)

つまり、大径化のデメリットを素材の改良で解消しているんですね。
Avail のマイクロキャストスプールも同じ理由です。




で、結論としては大径で軽いスプールであれば飛距離を稼ぐことができそうですが、大径化も軽量化にも限界がありますので、スプールを軽くした後はベアリングのグリスを抜いたり低粘調度のオイルを使ったり、さらにはベアリングのボールを小さくして慣性モーメントを下げるようなチューニングで最後の一延びを稼ぐような努力をされるんでしょうね。

( ;´Д`)=3ハァーチカリタ




一応、私のわかる範囲で色々と調べながら書いてみましたけど、実際のところ、ほかにもいろいろな要素があるみたいで、スプールとレベルワインダの抵抗はもちろん、糸が減って行くにしたがって条件は変わって行きますしスプールの動き出しと制動にかかわる慣性モーメントはスプール径の2乗に比例して大きくなったり、回す力はトルクの概念も必要だったりで回転系の力学は私には複雑すぎて良く理解できませんでした(苦笑)

ルアーのキャストスピードが光速に近づくと相対性理論まで出てくるかもしれません(爆)



ということで、N野さん、この理論であっているかどうか検証よろしくお願いしますm(_ _)m
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